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和の世界は終わる日記

サンジスキーの管理人、ゾロの扱いが酷くてすみません。 読者様参加型小ネタやってます。カテゴリ「参加型小ネタ」よりどうぞ。

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あけましておめでとうございます、そして子ゾロ

 玄関の鍵、そして 扉が開く音に、サンジは参考書から顔を上げた。おっとやべえ、もうこんな時間だ。
 廊下から、とたとたと騒がしくも可愛い足音が近づいてきた。
「サンジー!!今帰ったぞー!!」
 どーん、と背中に効果音を背負って部屋の入り口に立った緑髪のチビっこに、サンジは苦笑した。
「こらー。4歳児が昭和の父ちゃんみたいなセリフで帰ってくるんじゃねェー」
「血が出た」
 サンジの発言は無視したゾロの言葉に、しかしサンジは仰天して、「おい、どっから!?」と、炬燵から身を乗り出した。
 すっと、ゾロが小さな右手のひらをサンジに見せてくる。母子球のところに、ちょっとした擦り傷ができ、血が滲んでいた。
「どうしたんだこれ」
 サンジが問うと、子どもらしからぬ無表情で、ゾロは、
「転んだ」
と言った。言った瞬間、口がちょっとへの字に曲がった。4歳ながらプライドの高いゾロだ、転んだことが悔しいのだろう。
「そうか、よし、じゃあバンソーコーつけてやる。その前によく傷口を洗ってな」
「泣かなかったぞ」
 炬燵から出て、立ち上がりかけたサンジの服の裾をゾロが引いた。そしてサンジの目をじっと見つめてきた。ゾロが何を求めているのか、サンジは分かっている。
 しょうがねェな、とサンジは両腕を広げた。胸に、温かいかたまりが飛び込んでくる。
「そりゃあえらかったな」
そうやって頭をなでてやると、ゾロは、サンジにますます身を寄せ、満足そうに小さく唸った。
 
 
 ゾロは、サンジとは15歳離れたはとこだ。
 保育園から帰ってきた途端に、ゾロの家のはす向かいのアパートに住むサンジの家まで、合鍵を握りしめてやってくる。
 共働きで忙しいゾロの両親は、始めこそ2歳半の息子(そう、当時は2歳半だった)が、近所とはいえたったひとりで家を出ていくことに手を焼いていたが、なんかもう無理あいつ止められん、サンジ君よろしく、とさじを投げてしまった。お陰でサンジはゾロ専用保育士となってしまったのであった。
 勿論、サンジだって高校生だから、授業が終わってすぐに帰ってこられるわけではない。
 サンジの帰りが遅いと事前に知らせておけば、ゾロは勝手に家を出たりしなくなるくらいには少し大人になった(4歳児だけど)。
 しかし今は冬休み。調理師専門学校へ進む予定のサンジに取って、一応勉強はしているが、高校生としての最後のお気楽な休みで、ゾロにとっては、帰れば「いつも大好きなサンジが居るハッピータイム(ゾロの母談)」だった。


「ハッピータイムって……そんな感じじゃねェけどな……」
 台所でゾロのおやつを用意しながら背後を伺うと、ゾロは静かにブロックを組み立てている。
 サンジの家にやってくるからと言って、サンジに遊んでほしいとかだだをこねるわけでもなく、ゾロは淡々と自分の好きな遊びをしている。ゾロの両親にはたいそう感謝されているが、ゾロの母が言うように、本当にサンジのことが大好きなのかはよくわからない。
 懐かれているのは間違いない。ほぼ表情の変わらない4歳児だが、サンジの顔を見ると瞳がきらきらんと光る。よくわからないが、サンジの何かがゾロの何かを刺激するらしい。
 そしてサンジも、もちろんそれが嬉しくないわけではない。
「ほらクソガキ、おやつだぞ」

 声をかけるとぱっと顔を上げ、ぱぱぱっとブロックを箱の中にしまい始めた。
「片付け!」
「そうだ、片付け。えらいな」
 ホットミルクにはちみつをいれてやりながら、サンジはゾロに聞いた。
「今日は保育園どうだった?なんか楽しいことあったか?」
「忘れた」
「給食は?何が出た?何が美味かった?」
「忘れた」
 これだ。
 はあとため息が出た。ゾロの口からわくわく保育園ライフが語られることは、まず無い。ゾロは周囲のことにあまり興味がないらしく、加えて人に何かを伝達したいという欲求が極端に低いようだった。息子から保育園のことが何も聞けないと愚痴るイトコ違いのたしぎが気の毒で、サンジも微力ながら、ゾロにいろいろと質問をし、話させる訓練をしようとしているのだが。
(オレも4歳の頃はこんなだったのか……?)
 忘れた。
 あ、ダメだ、こりゃゾロと一緒だ。
「ゾロー、てめェなあ、もうちょっと色々喋れよ!そんなんじゃ女子に全然モテねェぞ!大きくなってからお嫁さんもらえなかったらどうすんだ!」
「ヨメ?」
「結婚だよケッコン!お前の父ちゃんみたいに、美人なお嫁さんemoji欲しいだろこのヤロー!」
 オレも欲しー!と騒ぐサンジをしり目に、ゾロは冷静にタオルで手を拭いて冷静に炬燵へ戻った。慌ててゾロの前に、おからで作ったドーナツを置いてやる。ゾロは小さい両手をぱちんと合わせた。
「いただきます」
「はいどーぞ。だからな!ヤローはどうでもいいが、とにかく女子とは楽しくお話ししろ!聞かれたことに“忘れた”は禁句だ!お前がこれから出会う女の子の中に将来のお嫁さんが居ると思ってお話ししろ!」
 自分の為のインスタントコーヒーを淹れ、炬燵に戻ってきたサンジは、およそ保育園児にする話しじゃない話しをこんこんとゾロに語った。が、次の瞬間ゾロが放った言葉に、熱いコーヒーを吹き出しそうになった。
「オレ、サンジと結婚する」
 うわお!!
 ゾロは、パクパクとドーナツを食べながら平然と言った。
「サンジと結婚する」
 サンジは目を丸くしてゾロを見た。
 こ、これは……。
 俗に言う、子どもにありがちな「ママ(もしくはパパ)と結婚するーーーーemoji」というやつじゃないだろうか。
 どうしよう、なんかむずむずする。ちょっと嬉しい。
「いや待て、なんでオレ!?」
「水戸○門(再放送)観たい」
「アホ!ガキは妖○ウォッチだろ!じゃなくてな!」
 いかんいかん、おにいさんのオレが動揺してどうする。
 勝手にTVの電源をつけようとしているゾロの手からリモコンを取り上げ、サンジはちょっと怖い顔を作って見せた。
「残念ながらオレとゾロは結婚できません」
「なんで」
 じろり、とまるで睨む様に見つめてくるゾロの鋭い眼光にちょっと怯んだ。4歳児がする目つきとは思えない。
「なんでってなー。お前もオレも男なの。男同士は結婚できないの!」
「おとこどうしでも結婚できる国があるって母ちゃんが言ってた」
 たしぎちゃん!!何を子どもに教えてんの!!
「無理!!無理無理!!オレとお前が結婚なんてぜーーったい無理なの!!」
「なんで」
 こんな子どもに、こんなに真剣に純粋に、なんでゾロとサンジが結婚しちゃダメなんだって言われると言葉に詰まる。どう説明したらいいんだろう。
「なんで……ってな、あのな。そう!!」
 良い言い訳を思いついた。
「だって、オレは、ナミさんと結婚するから!!」
 ナミは、サンジの同級生で、ゾロとも面識があるプリティーJKだ。ゾロが少しだけ驚いたような顔をした。
「ほら、お前も知ってるだろ?ナミお姉ちゃん!美人だし優しいし、オレたちラブラブなんだよ!!悪ィな、ゾロ。もうオレはナミさんとの結婚が決まってんだ。だから……」
 ぎょっとした。早口で喋るサンジをじっと見ていたゾロの目から、ぼろぼろっと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ゔわああああーーーーーーーーーーーん!!!!!」
 ええええええええええええええええええええええええ。
 がぼーーーんと顎が外れた。
「おい、ウソだろ!?マジで泣いてんのか!?」
 マジもマジ、大マジに泣いているのだが、信じられなくてつい問うてしまった。 
 ゾロが泣くなんて、滅多にない。ていうか、もしかしたら初めて見るんじゃないか?
「お前……、マンガみたいに泣くよ」
 あまりに盛大な泣き方に思わず笑いそうになった。しかし、ゾロが真っ赤な顔で天井を仰ぎ、サンジが大好きなぷくぷくほっぺを涙にべたべたに濡らしながら、わーんわーんと泣いているのを目の当たりにして、サンジの胸は押しつぶされたように苦しくなった。
 ゾロは確かに、まだたった4歳の子どもだ。
「ゾロ」
 手を伸ばして、ゾロの身体を引き寄せた。泣きながら少し抵抗を見せたが、構わず引くと首にしがみついてきた。
「ごめん、ごめんゾロ」
 よしよし、と小さな背中を撫でてやる。
「ウソだよ、ナミさんと結婚なんかしねェよ」
 そういうと、ゾロはしゃくりあげながらも大声で泣くのを止めた。
「冗談だったんだ。ごめんな、泣かせたりするつもりじゃなかったんだ」
 涙で濡れた真っ赤な頬をハンカチで拭ってやる。チーンって、鼻もかませる。
「ナミとは結婚しねェ?」
 顔をごしごし拭かれながら、一生懸命聞いてくるのが可愛くて、泣かせてしまったことが申し訳なくて、正直に答えた。
「ああ、しねェよ。つーか”ナミお姉ちゃん”だろ!残念ながら、ナミさんにはすでに彼氏がいらっしゃるんだよ!ああああクソムカつくぜルフィのヤロー!」
 まあまだルフィと結婚するってわけじゃねェけどな……とブツブツ呟くサンジの両頬が、ゾロの手で挟み込まれた。
「じゃあオレと結婚しろ」
 さっきまで泣いてたのがウソのような、いつもの強いゾロの目に、なんだか笑えてきた。安心した。
「しょーーがねェなあ!わかったよ。してやるしてやる。お前が一人前のいいオトコになって、それでも結婚してくれる女子がだーーーれもいなかったら、な」
 そう答えると、ゾロの結ばれた唇がむずむずと動いた。嬉しいらしい。
「約束だぞ」
 小さい小指が差し出されて、サンジも自分の小指を絡めた。
「ああ、約束だ」
 ゆーびきーりげんまーーんと、二人で歌いながら、サンジは、このゾロは、どんな男に育つんだろうな、と思った。
 ゾロが大人になって、サンジももっと大人になって、思い出話をするだろう。そしたら絶対このことをネタにからかってやろう。酒でも飲みながら。
 それまでゾロは、サンジと結婚したいと泣いたことを覚えていてくれるかな。
 こうやって、二人で男の約束したことを、覚えていてくれるかな。
 あ、ヤベ、ちょっと泣きそう。
「よし、ゾロ!じゃあ今日はうちでメシ食ってくか?ハンバーグ作ってやる!」
「うん!」
「じゃあたしぎちゃんに電話しとこうなー」
「うん!」
 サンジの携帯を使って、母親に電話しているゾロの目が輝いている。守られることのない約束をしてしまったが、ゾロが嬉しそうなので、サンジも嬉しかった。
 この、年の離れたはとこが、サンジは愛しいのだ。




 どうか、これからも彼の人生が幸多きものであり、その人生に、少しでも関われますように。




 と、サンジはささやかに祈った。



 つもりだった。



 まさか、この時に交わした約束をゾロが忘れることなく、14年後に改めて結婚を申し込まれるはめになるとは、夢にも思わなかったサンジであった(笑)



おわり




皆様、大変遅くなりましたが、2016年、あけましておめでとうございます!!
本年、サンジイヤー!!イエー!!何卒よろしくお願い申し上げますm(__)m


久々に、長めの小ネタをアップします!
この小ネタ、一昨年の1月2日に、なんなんでしょうね、急に思いついたんでしょうね、途中まで書いて、保存したまま2年間も放ったらかしになってました……。どんなオチにするつもりだったのか忘れてしまったよ!!
で、読み直して、よし、ほのぼのゾロサンにしようと思って書きました。
本来はわたくし、歳の差ゾロサンてあまり興味ないんですよね。
だってゾロサンは同い年であってこそのゾロサンやし。
でも、ちびっこゾロサンでほのぼのしたいなーーって。私が!!
なんだか年明け早々から、聞いてるこちらの胸まで重くなるような、悪くなるような、事件やら事故やら、芸能ニュースが多くないですか?
自分のことじゃなくても、ギスギスしたことが耳に入ってくると、なんか疲れますねえ~~。
ゾロサン海の隅っこから、ほのぼの世界を願います!


は!!じゃんぴ感想も書かなくちゃ!
今日は長くなってしまったのでまた次回!


1月3日、10日に拍手して下さった方ありがとうございました!!
ブログ拍手お礼は広告の下にあるつづきから!!


拍手[3回]





>カヲリさんemoji
わーんカヲリさーーん!!!ご無沙汰しております!!あけましておめでとうございます!!
お元気でしたか!?お元気でしたかっ!!?
サイト、何もしてないのに11年も経ってしまいました……(呆然)
相も変わらず私はゾロサンスキーです!えっへん!!←何故威張る
ね!!ここに来てサンジ出生の秘密って……!!予想外すぎて唖然としました。あんだけ我慢させられて、鞭を耐え抜いて、与えられた飴がでかすぎる……!!ほんと、サンジスキーに対してゴッドはドSやな……。
私、このブログでずっと、多分サンジはどっかの王子~vとかアホみたいに言ってましたが、ほんとにいいとこのボンボンぽい……!?やばい、テンションが上がる……!!(笑)
ほんとゾロはサンジを気にしすぎですよね!!
なんだよ、21歳になって色々吹っ切れたのかよ!!(喜)
ほんと、閉まってたゾロサン商店街のシャッターがガラガラ空くんじゃないかなーって期待してます!!
その為にはまずは自分が頑張らないとなあと。人任せではだめですものね。
カヲリさんの新作も期待しております!!書いて下さい!!私の為に!!←オイ
カヲリさんと久々にお話しできてめっちゃ嬉しかったです、ほんと有難うございます!!
愛!!!愛しかない!!!!!
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プロフィール

名前:
ノダ ワアヤ
性別:
女性
趣味:
趣味はサンジ!
自己紹介:
2次創作サイトの管理人の日記です。
間違って来られた方はどうぞお逃げになって!!
「ゾロサン」とか「ゾロサン」とか、聞きなれない単語が飛び交ってますよ!!
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